【#2】本当の自分を生きること。本領を発揮すること。

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コーチング、トランジション・タウン、
チェンジ・ザ・ドリームなど様々な活動を
日本に持ち帰り、実践してきたヒデさん。

一方で、私たちと同じ「父ちゃん」でもある。

ついつい、父ちゃんになることと、
自分らしく生きることは、
トレードオフの関係に考えがちである。

一方、ヒデさんはお子様の誕生で
より一層「自分らしく生きる」と覚悟が決まり、
さまざまな活動を続けてきた。

長年、探求と実践を続けてきたヒデさんに、
父ちゃんとして
「本当の自分を生きること」
の意味を伺った。

〜プロフィール〜

ヒデ / 榎本英剛 さん

よく生きる研究所 代表

大学卒業後、株式会社リクルートに入社。
1994年に同社を退職後、
米国サンフランシスコにある
CIIS(California Institute of Integral Studies)に留学し、
組織開発・変容学を専攻、修士号を取得。

その後、留学中に出合ったコーチングを
日本に拡げるためにCTIジャパンを設立
(現在は退任)

また、持続可能な未来を市民の手で創るため、
トランジション・タウンや
チェンジ・ザ・ドリームを日本に紹介した。
「トランジション藤野」発起人。

現在はよく生きる研究所の代表を務める。

本当の自分を生きるとは「本領を発揮する」こと

少しでも父ちゃんたちの視点が、
「理」から「意」に変わるだけでも、
自分らしく生きるきっかけ、ヒントが
あるんじゃないかなとすごく思いました。

父ちゃんになるということと、
自分らしく生きるということが、
トレードオフみたいな感じになってしまうときが
往々にしてあるなと思っています。

父ちゃんになるということは、
子どもができて、家族がいて、
家族を守っていかなくちゃいけない。

そのためには、今までのように、
子どもがいなかった時ほど
気楽にはやっていけないと感じ、
自分らしさから、どんどん遠ざかっていく。

そうせざるを得ないっていう風に思い込んでる人が
結構多いんじゃないかなという気がしています。

本当にそうですね。

だからこそ、父ちゃんも母ちゃんも、
自分らしく生きるということを
より強く意識しないと、
どんどん離れていってしまう。

「家族を守っていくためには自分らしさを
犠牲にしなくちゃいけないんじゃないの?」
という意見もあるかもしれないけれども、
そうした場合の子どもへの影響を
考えてみてほしいんです。

自分を犠牲にして、子どものため、
家族のためにと言って、
自分らしさのかけらもないような
人生を生きる親の元で育つ子どもと、
自分らしさをフルに発揮して
人生を生きる親の元で育つ子どもと、
どちらが自分らしい人生を生きる子どもが育つか。

その答えは明らかですよね。

まさに父ちゃんの大先輩でもあるヒデさんは、
どのように向き合ってきたのか、
葛藤した時期などはあったりされましたか?

親になってみて、いくつかのことを思いました。 

自分らしい生き方を探求していくための
1つの方法として、僕はよく、
「人は自分らしい生き方をする上で、
最適な家族や環境を選んで生まれてきた」
と仮定してみることを勧めています。

僕自身、自分の親との関係は、
決して理想的な親子関係ではありませんでした。
しかし、色々な苦労やチャレンジがあった中で、
その関係性が結果的に
僕が自分らしい生き方を見つけるのに
すごく役立ったという感覚があります。

それを今度は自分の子どもに
当てはめて考えてみたとき、
うちは娘1人なんですが、
この子はきっとこの子なりの自分らしい生き方を
見つけるために、
僕と妻を親として選んできたんだろうな
と考えるようになりました。

そう思った時に、自分が変に
“父ちゃんなんだから”と言って、
肩肘張って格好つけて、
いい父ちゃんぶろうとするよりも、
至らないところはたくさんあるけど、
僕が僕らしく生きていた方が、
娘も自分がなぜこの親を選んできたのか
探求しやすいのかなと思ったんです。

今のお話聞いてて、
ヒデさんが自分らしく生きる中に、
「娘のために」というような文脈が
出てきた気がしました。
ヒデさんは、娘さんが生まれた時に、
自分らしさの幅というか、考え方の広がりというか
そういったのは実際あったりはされましたか?

やはり、これからは娘のためにも、
自分らしく生きていこう
という覚悟が決まりました。

同時に、娘が生まれた時に感じたのは、
それまでは
抽象的で遠くにあるような感じだった未来が、
すごく具体的で目の前に
あるような感じがしたんです。

今ここに未来がある、そんな感じです。

娘のために、未来に対して、
自分は無関心ではいられないし、
無関係でもいられない。

未来に対する捉え方の次元が
少し変わった感じがしました。

それまでは、
一人ひとりがよく生きることを支援する
ということでよかったんだけども、
みんながよく生きられる社会って
どういう社会なんだろう?
と考えるようになりました。

気候変動などの問題も含め、
持続可能な未来ってどういう未来なの?とか。

親になったことをきっかけに、
自然とそういった問いが湧いてきました。

娘が、自分の人生に現れたということで、
より良い未来をつくるにはどうしたらいいか
というような方向に意識が向き、
そういう活動も始めていくようになりましたね。

大切なことなのですが、
本当の自分を生きるっていうのは、
“ただ単に自分が幸せになるためだけではない”
と思うんですよね。 

本当の自分を生きるということは、
「自分の本領を発揮する」ということでもあり、
そうすることでより良い未来をつくることに
貢献することだと僕は思っています。

他人の人生を生きていては、本領は発揮できない。

本当の自分を生き、
持って生まれたものを最大限に発揮してこそ、
より良い未来をつくることに
貢献できるのではないかと思ってます。

世の中は今、気候変動をはじめとして、
どこを向いても問題だらけじゃないですか。 

しかもその問題の大きさ、深刻度が
ますます大きくなってる状況で、
一人ひとりが本領を発揮せず生きていて、
果たして世の中が良くなるのか。
というのが僕の問いです。

やはりこれだけの問題を乗り越えていくためには、
1人でも多くの人が持って生まれた本領を
発揮する必要があると思うんですよね。

だから、
「本当の自分を生きられたらいいよね」とか
「自分らしく生きられたらいいよね」という
お気楽なことを言ってるつもりは全然なくて。

今、人類が直面してる問題を乗り越えるためには、
1人でも多くの人が、
本当の自分を生きないと
乗り越えられないんじゃないか、と。
そういう危機感からも来てるんですよね。

【#3】へ続く

この記事に関わったTOCHANSは...

榎本 英剛

よく生きる研究所 代表

「よく生きる」ことをテーマに独自のプログラムの開発および提供、著作、講演などを行っています。

八木 俊樹

TOCHANTO編集長

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