【前編】 我が子や孫の世代のために着ない服をゼロに。誰でもできる「スローファッション」の始め方

アイカさんはスローファッションを提唱している起業家。

イメージコンサルタントとして、自身もコーディネートのため、多くの洋服を着回し、お客様にも提案してきた。
しかし、「似合う」がわかるとお客様が「似合わないものを全部捨てて全部買い替えました」と言われることや旅行先で大量の洋服が放置されていることを目の当たりにし、違和感を感じ始めたそう。

そんな想いから2023年に「スローファッションジャパン」を創立。
なぜ立ち上げたのか、あいかさんの考える循環型社会とはどういうことか、洋服の手放し方は、などについて話を伺った。

〜プロフィール〜

香川県在住。
活動地域:東京・香川

2012年より、クライアントに似合う色、似合うデザインを提案するプロとして活動。
イメージコンサルティングサロン めぐりクローゼット高松店運営。
2025年より東京拠点で活動予定。

講師としてプロ・アマ関係なく延べ1100人のイメージコンサルタントの育成に関わる。
22ヶ国を旅して、先進国でファストファッションの店が並び、発展途上国では先進国の古着が山積みの現状を目の当たりにし、2023年4月より「スローファッション=今ある服を大切に長く着る」ことを広めるため啓蒙活動中。

メディア:西日本放送ラジオ、OHK岡山放送
実績:大手企業研修

なぜスローファッションか?

アイカさん本日は宜しくお願い致します!
最初に「スローファッション」というのお仕事を始められたきっかけをお伺いしてもいいですか?

はい。

もともと、主に一般の方に向けてイメージコンサルタントという「人に似合う」を提案するという仕事を12年続けていました。
続ける中でお客様から「似合うものがわかったから、似合わないものを全部捨てて、全部買い替えました」と言われることが多くて。

いつでも似合う服を安く購入できるのでそうされるのですが、その度に「いや、そういうことじゃないんだよな…」とモヤモヤすることが続いたんですね。
「似合う」というのは「似合う服を買う」だけでなく、「今ある服をスタイリングで工夫する」という方法もあるのですが、それが難しいと感じるお客様は、全部買い替えてしまうんです。

なるほど、全部捨てて買い替えたと言われるとなんだかモヤモヤしますね。

はい、服が使い捨てされていくのにモヤモヤしていました。

そんな時に、ファッションの裏側を伝えるドキュメンタリー映画「ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜」の上映がありました。

それがすごく衝撃的で。わたしもよかれと思って、ファストファッションをたくさん買っていましたし、寄付する先があるので、たくさん送ればいいと思っていました。
ところが、ドキュメンタリーの中で、そうして寄付することで地球の裏側の人に迷惑をかけているんだ、ということがわかって、とてもショックで…

まさか迷惑をかけているとは!っという感じですね。

そうなんです。わたしは海外旅行が好きで、ちょうど同じくらいの時期にマダカスカルに行きました。すると、すごい大量の服が、荷台の上にこんもり乗っているのを見てしまったんです。

「これってゴミなの?なんなの?」って通訳の方に聞いたら、「これはフランスからの古着だ」と言われました。映画と重なって、こうやって自分たちの見えないところに迷惑をかけているんだということを目の当たりにしてしまったんです。

ただ、その後子どもが生まれてバタバタしていたこともあって、特に何もしていませんでした。
ところが、2022年に同じ映画がきっかけで、エシカルなセレクトショップを立ち上げた方を知りました。
その時、同じきっかけで、同じ課題を感じて、行動した人もいるのに、わたしは何も行動していなかったことにハッとさせられました。

それは考えさせられますね。

私も今こそ行動する時なんじゃないかと思い、2023年から「スローファッションジャパン」を立ち上げ、一緒にやりたいという方とチームを組んで啓蒙活動を始めました。

その一環で、ずっと継続しているのが「スローファッション実践講座」という講座です。一般の方に服の現状や取り入れ方、手放し方を体系的に学べるようになっています。

「スローファッション実践講座」ですか。

はい、まだ始めたばかりなのですが、この大量消費時代に服1着を大切に着ようというのは、一般の方にはまだ実感がないようなので、今は啓蒙活動と視察がメインです。

いま、一番難しく感じているところはどこですか?

みなさん、関心があるのですが、「食」などと比べて「服」となると“面倒”が先行する傾向にあるかなと思います。
また、直接健康に関係しないし、持っていても腐るわけじゃないし。

でも、結局タグ付きで全然着ないものが家にあるっていうのも、みなさん経験があると思うんですよね。買ったけど、着なかったとか。買うのは楽なのに、手放し方が難しい。

確かに誰しもその経験ありますね…
アイカさんの場合は優先順位がなぜ高いんでしょうか?

そうですね、わたしの場合は、子どものころから田舎に住んでいたというのがあるかもしれません。ゴミを捨てられる側の立場でいたというか。
車に乗っている人がたばこのポイ捨てをしたりしますよね。
当時、それを拾うのは子どもの自分たち。子ども会とかでゴミ拾いをしていました。そのときに、どうして捨てるのかな、捨てたあとのことを考えないのかな、という意識は自然と持っていました。

その意識が服の廃棄やマダガスカルで見た大量の服のゴミにリンクしていたというか。

子どもや後進国という弱者が引き受けなければならないという点が共通したんですね。

そうです。
香川に引越ししてきて、1年間SNSで発信してきましたが、SNSで広めていくよりも地域の人と課題解決していくのが重要だと感じ始めています。

地域をあげての循環が必要ってことでしょうか?

そうです、そうです。
だから、まずは息子が通っている小学校で服を捨てないで循環させる取り組みをしようと計画しています。小さなコミュニティでやって、それを大きなコミュニティに持って行きたいと考えています。

最近、香川で服の循環について課題解決したいと感じている方と出会いも増えてきました。
例えば、香川で循環をコンセプトにした「アジサーキュラーパーク https://ajicircularpark.jp/ 」というショップがあり、アップサイクルされた服や、服の交換ブースや、脱プラスチックの日用品などの販売をしているんです。

面白そうですね!

先日、市とこのお店を運営する会社が主催の、服をウエス(工場用の雑巾)にするリサイクル工場見学をさせてもらったのですが、そこには市で出されたリサイクルの服が毎月に60トン〜80トンも集まる。とにかくすごい量でした。

よく見ると、ほとんどの服がとてもキレイなんです。
工場の方にお話を伺うと、高級品はメルカリなどで売れるので、ここに出されるほとんどは、ファストファッションばかり。ウエスはコットン100%じゃないと作れないのですが、そのほとんどは合成繊維や混紡遷移なので60トン〜80トンあっても使えるのは10%ほどだそうです…

ということは、古着の回収に出しても、使われていないってことですか?

そうです。使えないものはプレスしてコンテナに入れて、輸出するそうです。
その後はどこに行っているのか、何に使われているのかはわからない…

えー、海外で循環されているとは思われませんね。すごい衝撃…

わたしは「世界中の着ない服ゼロ」をビジョンに掲げてやっているんですが、それを見た時に、途方も無い量に実現不可能かもしれない。クラっときてしまいました。

それでも、「世界中の着ない服ゼロ」を目指してやっていきたい。わたしは最初の種まきをしている段階だと思っています。

この光景を見たからこそ、まずは高松市で着ない服を減らすということをやっていきたいと思います。

だからこそ、まずは住んでいる場所からなんですね!

一個人でできることは限られているけど、わたしたち着る側の意識が変わらないと変わっていかないので、自分ができることをやりたいと思います。
イメージコンサルタントは、アパレル企業と消費者のちょうど間に入っている存在なので、啓蒙するのが役割かなと感じています。

どうやって洋服を手放せばいいか?

具体的な手放し方について伝えていることを教えてください。

まず最初に、本当に手放すのかを考えてほしいと思っています。

もし汚れているなら洗ってみる、ほつれているならお直しに出してみる。
あと、染色。白くて汚れているんだったら暗い色に染めてみるのもよしです。
他にもアップサイクル。違うものにリメイクするとか。

それからようやく寄付、もしくは買取に出す、という感じで手放すことを考える。
ぼろぼろだったら、我が家でウエス(雑巾)にする。

なんだか、古き良き時代のお母さんがやってたことみたいですね!

サステナブルな生活って江戸時代に戻るみたいなことかなと思ったりしています。
ウェスにして雑巾にして、それも使い切る。

あとは、最初からリサイクルをすることを念頭において、コットン100%や天然素材100%のものを購入するとか考えれるようになると、もっとリサイクルもいろいろできるようになります。

個人的には、寄付はあまりおすすめしていません。寄付したあとにどうなっているのか、追跡ができないから。

買取なんかも、いますごく増えていますけど、バックヤードは服が積み上がってて、大変なことになっているそうです。古着が多すぎてさばききれない、値段も付けきれない。だからお店のほうで、めぼしいものがないときは、そのまま捨てちゃうこともあるそうです。

できれば自己完結できるといいなと思っています。

えー、それって古着屋に出している意味がないですね。。。

そうです。その一因は、自分はすぐ古着屋に出すけど、新品しか着ないという人も多いそう。だから買取だけが増えていく。

これからどのように啓蒙していきたいですか?

わたし自身、イメージコンサルタントなので、オシャレは好きなんですね。だから不買運動をしたいわけじゃないんです。お客様も「買うな」と言われても困ると思う。

だから、オシャレを楽しみながら、自分の適正量を購入する、というだけでずいぶん変わってくると思っています。要は服を買いすぎなので、それを見直してほしい。適正量に減らしていく、

それがわたしの目指したい部分です。

不買運動をしたくないというところに共感しました!

服は大きなパワーを持っていると思っていて、そこもしっかり伝えていきたいと思うし、日本の伝統的な織物も知ってほしい。なんでもファストファッションを買うのではなく、本物と言われるもの、着心地がいいものに触れて選んでもらうと、日本の伝統も見直されるんじゃないかと思っています。

後編へ続く。

この記事に関わったTOCHANSは...

藍香

スローファッションジャパン代表/イメージコンサルタント/男子のかーちゃん

東京拠点。服の大量生産・大量廃棄を解決するため、忙しい人たちのクローゼットをストレスフリースペースにする活動をしています。

都築 千佳

編集・広報/きらめき発見カウンセラー/クリスタルボウル奏者

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