【前編】「学校だけが選択肢じゃない」夢中教室代表が語る、子どもの可能性と親の向き合い方

「学校に行けない」という現実に直面したとき、
親は不安と自責の念に苛まれがち。

しかし、それは決して特別なことではない。

300人以上の不登校の子どもたちと向き合ってきた
「夢中教室」「夢中カレッジ」を運営する
株式会社ワオフル代表の辻田さんは、
どの子にも必ず「好き」なことがあり、
それを見つけることが大きな一歩になると語る。

辻田さん自身が出会った3つの
貴重な経験から生まれた「伴走先生」の価値。

子どもたちが未来に希望を持てる
社会をつくるため、
新しく、温かな教育への挑戦について伺った。

〜プロフィール〜

辻田 寛明さん

ワオフル株式会社代表取締役。

オンライン家庭教師「夢中教室」(2020年11月〜)
オンラインフリースクール「夢中カレッジ」
(2024年2月〜)を運営。

大学時代からキャリア教育活動に携わり、
2019年にボーダレス・ジャパンに新卒入社。
「子どもたちの生きづらさを解決したい」
という思いから、
2020年9月に起業し、現在の事業を立ち上げる。

クラウドファンディングも実施中
現在、ワオフル株式会社様では、
クラウドファンディングも実施されております。
ぜひ、こちらもご覧ください。

3つの出会いから始まった「伴走先生」

辻田さん、本日は宜しくお願い致します!
はじめに、辻田さんの展開されている事業について
簡単に教えていただけますか?

はい!

大きく分けて、2つの事業を運営しています。
1対1のオンライン家庭教師スタイルの夢中教室と、
少人数制でメタバースを使った
オンラインフリースクールの夢中カレッジです。

それぞれの具体的な内容を教えていただけますか?

夢中教室は2020年11月〜スタートした事業です。

https://wowfull.jp/

最大の特徴は、勉強を教えるのではなく、
その子の興味関心、好きなことを一緒に見つけて、
そこを深掘りしたり、探求したりすること。

そこから世界が広がっていくような
伴走をしています。

それに続く形で、夢中カレッジを
2024年2月〜ベータ版としてスタートし、
4月から本格的に始まりました。

https://wowfull.jp/college

夢中教室で元気になった子や、
横のつながりが欲しい子たちの場所として、
また学校とも併用でき、
学校の代わりにもなる選択肢として始めています。

人に対する不安感があったり、
いじめなどの経験で、学校が苦しい子たちでも
安心して参加できるよう、
しっかりとサポートしています。

ゆっくりでもいいから、人間関係をつくったり、
みんなで学ぶ楽しさを
味わったりしてもらえるような環境を
つくっています。

二つのサービスは
どのように使い分けられているんですか?

メインとしては、夢中教室で元気になった子の
次のステップとして夢中カレッジを
利用するケースが多いです。
ただ、最初から両方を同時に利用される方もいます。

説明会に参加してくださり、
「どっちもいいね!」と感じて頂き、
両方同時に始めるという方もいらっしゃいますね。

不登校といっても一括りにはできません。
『100人100通りの不登校がある』
というのが私たちの考えです。

人に会うのが怖い子もいれば、
そうでない子もいる。

その子に合わせて、
柔軟に対応できる環境を用意しています。

これらのサービスを始めようと思った
きっかけを教えてください。

きっかけは大きく3つあります。

1つ目は大学時代の経験です。

東京で大学生だった私は、
地方から修学旅行で来た中高生に
大学生活を紹介する活動をしていました。
とても楽しい活動でした。

例えば、対馬から来た女子高生が
私の話を熱心に聞いてくれてたことを
今でも覚えています。
その子と最近、偶然再会できて、
本当に不思議な縁を感じました。

素敵な出会いですね!
その活動がどのように
きっかけになったんでしょうか?

座談会などで話をしていく中で、
将来に対して希望を持てていない子たちが
多くいました。
『どうせ自分には無理だから』
『大学なんて…』
と、諦めの言葉を聞くことが度々ありました。

私自身はそのように感じたことがなかったので、
なぜそうなってしまうのかと
強いモヤモヤを感じたのを覚えています。

中高生からそんな声がでてくるんですね。

そうなんです。

当時は東南アジアの貧困研究をしていて、
現地に行く機会もあったのですが、
そこで見た光景が印象的だったんです。

現地の子どもたちは、生活環境が厳しい中でも
『将来先生になりたい』
『家族と暮らして幸せになりたい』
と、幸せそうに語ってくれる。

一方で、日本の子どもたちが感じている
閉塞感や理解してもらえない苦しさは、
なんとかできないかと考えるようになりました。

2つ目のきっかけも教えてください。

2つ目のきっかけは、以前働いていたオフィスに、
不登校の女の子が来ていたんです。
僕の中で不登校の子とのはじめての出会いでした。

小学3年生で、本当にいい子でした。
私と同じように歴史が好きで、
たくさん話が盛り上がりました。

ところがある時から、
その子はオフィスに来なくなってしまったんです。

最初は学校に戻ったのかと思ったのですが、
実はずっと家にいることがわかりました。

なぜ来なくなってしまったんでしょうか?

お母さんから聞いた話では、その子は、
人への不安や恐怖を感じやすかったそうです。

周りの大人から
『なぜ学校に行かないの?』
と言われることが多く、
それがとても辛く感じるようになって、
家に閉じこもるようになり、
自分を否定する状態になってしまっていました。

そうだったんですね…

ちょうどその頃はコロナ禍で、
不登校の子どもたちが増え始めている時期でした。

学校に行くか行かないかは、
その子の人生の一時期の出来事かもしれません。

でも、その経験によって自分を否定してしまい、
人生に希望を持てなくなってしまうのは、
日本社会の問題だと強く感じました。

なるほど。本当にそうですね。
3つ目のきっかけについても教えてください

3つ目は、
私の人生を変えた美容師さんとの出会いです。

幼稚園の時から今でも
髪を切ってもらっている美容師さんです。

元々は外資系企業で世界を飛び回っていた経験を
持つ方なのですが、
今は私の地元で美容師をされているんです。

私たち夢中教室では子どもを担当する大人を
「伴走先生」と呼んでいるんですが、
その美容師さんが私にとっての伴走先生なんです。

その方とはどんな関係だったんですか?

月1回の髪を切る時間だけでしたが、
継続して会う中で私のことを知ってくれて、
ちゃんと人として見てくれる。
小中高と年齢を重ねる中で、
色々な本を紹介してくれたり、
釣りに連れて行ってくれたり。

なにより、
『君はこういうところもできるし、
本当に何でもできる。未来が楽しみだね』
と、いつも前向きなことを言ってくれるんです。
君は弁護士も向いているかもしれないとか、
バリバリのビジネスマンとして
海外で張り合っていくのも
向いているかもしれないね。将来が楽しみだ!
とか言ってくれて(笑)

中高生の自分にとって、そんな風に言われると
「あれ、できるのかな」って思えたんです。

髪を切ってもらっている時間で
そんな関係性が築けたんですね

最初は、単におしゃべり好きの美容師さんだと
思っていましたが、
中学、高校と成長していく中で、この人と
話すのが本当に楽しみになっていきました。
今でも『友達』と言ってくれる大切な存在です。

この経験が今の活動に
どうつながっているんでしょうか?

この経験があったからこそ、
家から出るのが不安な子どもたちにも、
同じように内側をしっかり見てくれる
大人との出会いがあれば、
人生は変わるんじゃないかと考えました。

私はすごく恵まれていたと、
事業を立ち上げるときに改めて気づいたんです。

「好き」は誰にでも必ずある

そんな出会いから始まった夢中教室。
大きな特徴の1つでもある「好き」を見つける。
保護者の私たちも、
日々何が好きなのかわからない
と思うことがよくあるのですが、
具体的に、子どもたちの好きなことを
どうやって見つけていくのでしょうか?

子どもによって、最初から
『好きなことはこれです』
とはっきり言える子もいれば、
そうでない子もいます。

でも、『わからない』と思っている子でも、
実は好きなことはあるんです。

ただ、気づいたり、伸ばしていく
機会がなかっただけだと考えています。

わからないと思っている子に対しては、
どのようなアプローチをされているんですか?

『好きなことマップ』という手法を使っています。

マインドマップのように、その子が好きなことを
どんどん書き出していくんです。

好きなことって大それたものじゃないといけない
と思いがちですが、全然そうではありません。
些細なことでもいいんです。

例えば、
アリの観察が楽しい。
マインクラフトで建物を作るのが楽しい。
どちらも立派な『好き』なんです。

もう少し、具体的な例を教えていただけますか?

例えば、YouTubeをよく見る子がいたとして、
その中にも好きが散りばめられています。

マインクラフトの実況を見る子なら、
チャンネルごとの特徴や、
どういうところに楽しさを感じるのか、
一緒に探っていきます。

そこから、例えばジェットコースターや
アトラクションを作るのが好きだとわかれば、
『世界にはどんなアトラクションがあるか
見てみよう』と、世界の遊園地を調べてみる。
すると、
『このヨーロッパの国、すごいアトラクションが
たくさんあるね』
という発見があったり。

あるいは、マインクラフトの回路作りから
理系的な思考が得意だということがわかったり。
小さな『好き』から、
どんどん世界が広がっていくんです。

“一緒に”考え、“一緒に”楽しむ。

好きを見つける関わりだけでも
子どもたちがイキイキしていく姿が
想像できました。
伴走先生の関わり方について、
もう少し詳しく教えていただけますか?

こちらから一方的に教えるという関係性をなくす
ということはすごく大事にしています。

私たちでもわからないことは一緒に調べたり、
ときには子どもに教えてもらったりもします。

なぜそういった関わり方をされているんですか?

私たち伴走先生は、
一緒に横の目線で楽しんでいく
という考えを大切にしています。

わからないときは『わからない』
と子どもたちに正直に言います。

でも、だから投げ出すのではなく、
『わからないから一緒に考えてみない?』って。
そういう姿勢を大切にしています。

その関係性が子どもたちにとって大切なんですね。

そうなんです。等身大で関わりながら、
子どもの声に耳を傾けて、一緒に考えて。
同じひとりの人間として、
一緒にどこかに向かっていくような。
そんなスタンスを大切にしています。

続きは後編へ。

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現在、ワオフル株式会社様では、
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ぜひ、こちらもご覧ください。

この記事に関わったTOCHANSは...

辻田寛明

ワオフル株式会社 代表取締役 / 夢中教室

不登校の子向けのオンライン教室「夢中教室」を運営。オタク気質なアウトドア派で、人の「好き」に触れるのが好きです。じーつーと呼んでください!

キヨタケンスケ

キャリアコンサルタント/琵琶湖沿い在住/2児の父ちゃん

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