interview
となりの父ちゃんを訪ねて Vol.5
ならっち / 奈良大輔 さん
子育てと仕事の両立は、父親にとって非常に悩ましいテーマ。
近年では、男性が育休取得する割合も増えている一方で、育休の期間や、取るだけ育休などさまざまな課題も出てきている。
今回は、東京から山梨県へ移住し、合計4年間の男性育休を経験したならっちさんにお話を伺った。
移住や育休取得を決断した背景や、スキル習得によるキャリアチェンジ、さらには夫婦関係の危機の乗り越え方まで。
ならっちさんの経験から、育児に悩む父ちゃんたちへのヒントを探る。
〜プロフィール〜
大学卒業後、ITベンチャー、コーヒー会社、紅茶の卸業と会社員を経験。
カフェ開業への憧れから嗜好品飲料の経験値を積んできた一方で、自由な働き方を目指して様々なイベント企画やゲストハウス運営なども行う。
現在は、山梨県都留市と東京都品川区でシェアハウス3棟運営、オンラインコミュニティ運営、IT研修講師をしつつ、家族や仲間と定期的に旅をするライフスタイルを確立中。
喜び溢れる生き方、働き方を追求しながら、大切な人と豊かさを分かち合う暮らしを志している。
自然豊かな土地への移住とシェアハウス生活
ならっちさん、本日は宜しくお願い致します!
まずはじめに、ならっちさんの今の暮らしについて教えていただけますか?
はい。
もともと、結婚してから約3年は、東京と山梨との距離で週末だけ会う別居婚スタイルをとっていました。
子どもが生まれてからは、僕も山梨に移住して、今は家族で山梨県都留市というところに、シェアハウスで暮らしています。
シェアハウスで暮らしているんですか!?
そうですね。1階に私たち家族、2階をシェアハウスとして貸していて、息子が1ヶ月半のときから一緒に暮らしている仲間がいます(笑)
すごい!家族として、東京ではなく、山梨で暮らそうという決め手はなんだったんですか?
妻の希望もあったんですけど、家族のライフスタイルの理想としても子育ては自然があるところでしたいというのが優先順位として強かったですね。
実際、暮らしてみて、いかがですか?
まずは、保育園の環境がめちゃくちゃいいんですよね。息子は、お寺が運営してる保育園に通っているんですけど、日常的に山遊びをしたりとか。自然体験が日常的にできるんですね。
よく自然体験プログラムとか、お金をかけて、体験するプログラムがあるじゃないですか。それが日常の当たり前なので。
自然体験が幼い時からすごくできていることのメリットは相当大きい気がしますね。
週末はどのように過ごされていますか?
自然はもちろんなんですけど、子育て支援センター行って遊んだり、最近は富士急ハイランドの年パスを買ってよく行ってます。2ヶ月前とかに買ったんですけど、もう5回ぐらい行ってますね(笑)
いいですね、自然もあり、遊ぶ場も充実していて。
お話聴く限り、ならっちさんの移住は大正解だったように感じたのですが、東京からの移住はどのように決断されたんですか?
年齢重ねてきていたということもあり、子どもどうしようという思いと、長らく会社勤めちょっとしんどいな…みたい思いもあり、正直なところ、若干逃げの意識がありました。
当時はそんな思いもあり、子どもを授かったタイミングで育休とって、移住しようっていうのはありましたね。
“逃げの思い”から始まった、育休生活
逃げの意識があった…意外なお言葉でした。もともとはどういったお仕事をされていたんですか?
新卒でITベンチャーに入社し、約3年半働いていました。そこではバックオフィス系をやってましたね。
その後、20代中盤には、将来カフェをやってみたいと考えていたこともあり、知人の紹介でカフェの運営をしてる会社に転職をして、オンラインショップの運営や、卸売の事務作業、店舗イベントの企画など幅広く携わらせてもらってました。
自分で間借りカフェをやってみたりもしていて、当時は「カフェで生きるぞ!」みたいな感じでしたね。
その後、紅茶とハーブティーの卸売会社に転職しました。小さい会社だったので、営業から製造管理まで全部やるみたいな感じでしたね。
その会社で3年間の育休を取得されたんですよね?
そうですね。育休を取得したら移住をすることも視野に入れていたので、出産の数ヶ月前から会社には「育休を長期間取ります」と話をしました。
男性も育休を取る文化があったんですか?
いや、全くなかったですね。先輩でも育休を取ったことがある人はいないはずです。女性でもいたのかな…くらいの雰囲気でした。
前例がない企業で、長期間の育休を取得することについて悩みませんでしたか?
そうですね。先ほど、逃げの意識があったとお話ししたと思うんですけど、実は当時、退職することもちらついてる感じだったんです。社長もそんな自分の想いも感じ取ってくれていたのか、相談した際には「一旦取ってくればいいんじゃない」みたいな感じでした。
なるほど。ちなみに、移住や退職も考えられていた中で、最初どれくらいの育休期間を予定していたんですか?
丸々1年は取ろう、場合によっては2年もあり得るかもしれないという感じではありました。
当初から2年は取得しても良いと考えていたんですね。
はい、そうですね。
結果としては、育休を3年、退職してからも1年育休のような形になりましたね。育休という言い方が正しいのかわからないんですけど(笑)
息子の時間と自分自身の新たなチャレンジ
合計4年間の育休生活。この期間、どのように過ごされていたんですか?
最初2年はできるだけ長く息子との時間をつくっていました。コロナ禍の影響もあって、会社に戻るのもな〜…ということも考えていたので動画編集を学んで実践してみたり、講師業をやってみたりもしてましたね。
すごいアクティブ!
そうですね、子供が生まれる前に動画の企画と編集の講座に2ヶ月通って。
生まれてチャンネル始めたみたいな感じですね。競合チャンネルリサーチして、こういう構成で作ろうみたいなのをある程度イメージして、実際結構みられたり再生回数回ったりしましたね。
最近ちょっとあんまりもう全然なんですけど(笑)3歳の誕生日のやつがもう最後かもしれないですね。そこから、YouTubeで収益化できたり、ちょっとバズったりしたので、動画編集の講師みたいな感じで少しやらせてもらったりしていました。
育休期間中にご自身のチャレンジもしていたんですね。他にも何か取り組まれたことってありましたか?
最後の半年間は教育訓練支援給付金という国の制度を使って、G’s ACADEMY(https://gsacademy.jp/)という講座を受講しました。起業、転職も視野に入れながら、プログラミングを学びましたね。
ここでは、息子が0歳とか1歳の頃に、第三者の繋がりのおかげで自分が救われた経験もあったので、そう言った繋がりを作れる「パパトークス」というサービスを卒業制作で作りました。
シェアメイトや仲間の存在の大きさ
救われたというのは、当時苦しんだご経験もあったんですか?
やっぱり妻も余裕がないし、毎日頑張ってる中で、お互い結構しんどい時期があって。夫婦仲が悪くなっていると感じていた時期があったんですよね。
産後クライシスという本も読んだりして。
「出産直後で関係性が悪くなっちゃう夫婦は、その後一生回復しない可能性あります」
みたいな僕を怖がらせる内容もあったので、そうならないよう頑張ってはいましたが、すごく悩んでいましたね。
大変だったんですね。それははどうやって乗り越えたんですか。
第三者に助けられることが多々ありました。
小さなことですがシェアハウスだったので、同じ空間に家族以外の仲間も一緒に生活している。当たり前なんですけど、共有部分をちゃんと片付けようとか。シェアメイトが良い意味で緩衝材になってくれていました。シェアメイトっていう、 どっちの味方でもないフラットな存在が居てくれたのは意外と大きかったですね。
あとは第三者を入れて、夫婦で話をする場を1、2回つくりました。お互いコーチングを学んでいたこともあり、割とそういうところは、委ねちゃおうみたいなところが強かったですね。
それに加えて、2人一緒っていうのは1、2回とかでしたけど、それぞれが個別で相談するみたいなのは多分いっぱいありましたね。私は、コーチングのコミュニティにも参加していたので、その仲間と話したりとか。
やっぱ違います?そういう仲間と話すと。
全然違いますね!
自己認識できていなかったことを、話すことで気付けたりだとか。一回でも自分から吐き出す相手がいたことはすごく大きかったですね。
この経験もあり、G’s ACADEMY受講中には第三者とのつながりの場をつくりたいと思うようになりました。
父ちゃんとしての直感を大切に
ならっちさんにとってこの4年間は、会社員として「働く」ということから離れた期間だった。離れていることに対して不安や悩みなどはなかったんですか?
これは、自分がコーチングを学んできたことが活かされていると思うんですけど、自分の存在価値と成果を出すことの価値をなるべく切り離すようにしていました。
もともと僕は自己肯定感低かったり、根はすごくネガティブだったりするんですよね。だから意識的に自分が生きやすいように、自分のものの見方や世界を作り変えていくことは普段から意識しているのかもしれないですね。
すごい!休むこと、立ち止まることに葛藤している父ちゃんってすごく多いと思うんですけど、ならっちさんのようなマインドになるためにおすすめの方法とかってありますか?
ベストセラーとかになった「嫌われる勇気」を読んでもらったらすごくいいかもしれない!多分、普段からこの本に書かれていることを無意識のうちにたくさん実践してる感じだと思うので。
ありがとうございます。僕も読んでみよう!
最後に、4年間育休をするってすごいことだと思うんです!「俺もやりたい!でも、やっぱり1週間しか取れないか…」って父ちゃんがほとんどだと思うんです。
そんな父ちゃん仲間に、実際ご経験されたならっちさんから一言メッセージを頂いてもいいですか?
大前提、結局取っても、取らなくても、どっちも辛いよって僕は思うんです。仕事にも辛さがあれば、休み続けることにも辛さがある。
だったら直感でいいんじゃん!ってすごい無責任なんですけど(笑)そう思ってます。
その上で、僕は「心の豊かさ」みたいなところの重要度がどんどん上がってる感じがしてて。
その心の豊かさの土台って「家族」だと思うので、妻の関係性とか、子どもとの関係性の中で、そういった心豊かさを築けると、豊かな暮らしというか、幸せライフスタイルの近づくんじゃないかと思ってます。
僕の場合、大変な思いをしている時は、第三者と話して、辛さを言えたりだとか、回復できる機会をちゃんと持つのが大事だったなって思います。
ときには家の中だけで解決しようとせずに、外で自分のエネルギーをチャージして。チャージした分、ちょっと明るく、ちょっと主体的に、家に帰ってきて家族と関わる。その積み重ねでちょっとずつ状況は良くなっていったりするので。
そんなつながりを持ちながら、家族を土台に心を豊かにする。そのために直感で立ち止まってみて欲しいなって思います。
実際4年経験したならっちさんだからこそ、僕たちにもすごく突き刺さる言葉でした!
ならっちさん、本日はありがとうございました!
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