interview
となりの父ちゃんを訪ねて Vol.5
にっしー(仁科 賢人)さん
長野市のパパサークル・フリーペーパー「おっきいて」の創立者、にっしーさん。
地域で子育て中の父親向けのサークルを立ち上げイベントを開催したり、さらには季刊誌を刊行したりと、精力的に活動している。
今でこそ長野市の父ちゃんたちの中心的存在のにっしーさん。
しかし、父親ならではの子育て・家庭の悩みをひとりで抱えていた時期もあったそう。
今回はにっしーさんに、パパサークル・フリーペーパー「おっきいて」の活動やこれからのビジョン、子育てに奮闘する父ちゃんへの想いを伺った。
〜プロフィール〜
13年間勤めた地元テレビ局を2023年退職し、映像プロダクションとして独立。
趣味は息子と釣りに行くこと、鶏を飼うこと。
長野市出身で現在は市内の飯綱高原エリア在住。
今秋、自宅近くで家族連れで楽しめる宿をオープン。
父ちゃんたちが集う子育てサークル「おっきいて」
本日は宜しくお願いします!
はじめに、にっしーさんの活動について簡単にお聞きしてもよろしいでしょうか?
今は、「おっきいて」というパパサークルと、同じ名前でフリーペーパーの発行も手がけていて、 この夏にちょうど3号目を出しました。
そんなのをしてるところがメインかな。
会社員時代から活動されているんですよね!
まず、メインとなるサークル活動「おっきいて」について教えていただけますか?
「おっきいて」は、長野市のお父さんたちによる子育てサークルです。 立ち上げたのは2018年の10月なので、もうじき丸6年になります。
年に何回かイベントや飲み会をして、不定期かつ内容もさまざまなのですがお父さんたちが交流する場を作っています。
2024年現在、何名の方が所属されてるんですか?
メンバーは約30名です。
今、市内に住んでるお父さんだと、20人ぐらいかな。市外へ引っ越した人もまだ所属してくれています。
「ここに遊びに行くので良かったら一緒にどう?」とか、 「新しくできたこの店よかったよ!」とか、そんな情報のやり取りをよくしてますね。
転勤族の方とかも所属しているんですね。
むしろ長野にバックボーンがない人たちの方が多いかな。
長野出身の人たちは、地元の友達がいるから、関わりがすでに地域にあったりするんですよね。
そうじゃなくて、移住をしてきたとか、就職でこっちに来たとか、全然地域にバックボーンがない人たちが、 お父さんのつながりとか地域のつながりを求めて入ってくるパターンの方が多いかもなあ。
父ちゃん同士、この想い分かち合えたら
そうなんですね!にっしーさんが「おっきいて」を始められたきっかけは何だったんですか?
当時勤めていたテレビ局初の男性育休を取ったことが、1番のきっかけです。
2016年2月に2番目のこどもが産まれ、僕もはじめは当時担当していた番組のネタになると思って、興味本位で育休を取ったんです(笑)
それで、いざ子育てに関わってみたら結構楽しかったんだけど、それ以上に、うまくいかないなあ、と思うことがすごく多くて。こどもたちは妻にはなつくけど、僕にはなついてくれない…。一生懸命家事をしても、妻に「もっとこうしてほしい」と言われたり、もはや僕に内緒でやり直されていたり…(苦笑)
「頑張っているのに…どう頑張ればいいんだろう…。」って色々ひとりで悩んでて。
妻はすごくフォローしてくれるんだけど、「他のお父さんがどうしてるのかな」ってのがすごく気になったんです。
「こううまくやってるよ」とか「うまくいかないなあ」っていうのを分かち合えたらいいのに、と。
ずっとそんな想いがありました。
子育ての悩みや葛藤を“父ちゃんたちと共有したい”という気持ちがあったんですね。
そこから「おっきいて」は、どんな形でスタートしたんですか?
最初は職場から「育休体験をみんなの前で話をしてみない?」っていう話をいただき、育休取得の翌年に会社のカフェスペースでトークイベントをしました。
で、イベントの最後にみなさんに聞いてみたんです。
「子育てをもっと楽しみたくて、僕がこの場でサークルを作りたいんですけど皆さん参加してくれますか。」って(笑)
そしたら、参加者のほぼ全員がその場で手を挙げてサークルに入ってくれました。
それでいきなり10人弱ぐらいでスタートすることになったんです。
そんなスタートだったんですね!ちなみに一人目のお子さんの時は、育休だったりサークル設立だったりの発想には至っていなかったんですか?
かなりの仕事人間だったからね、第一子の時は(笑)
出産こそ立ち会ったけど、全然家庭を顧みない生活でした。22時ごろまで残業して、その足で飲んで家に帰ることも多かったし。
当時は、父親としての当事者意識みたいなのもなくて…。こどもの世話や夜泣きで仕事に影響を及ぼしたくないとすら思ってました。だから、当時住んでたアパートも、端と端に妻とこどもの寝室、自分の寝室って過ごす空間も分けてたくらいでしたね。
子育ては全て妻。僕は、仕事→家帰って寝る→また仕事行くみたいな生活。
休みの日以外はほぼこどもに関わらない生活でも、なんとも思っていませんでした。
「男は仕事・女は家庭」という、両親を見て感じてきた固定観念があったから、なんとも思ってなくて。
実は第二子が産まれる時も、そのままの自分だったんです。
ただ、巷で「男性育休」という言葉が話題になり始めてるし、“ニュース記者”として興味をそそられたのもありました。
「特集にできそうだし、どれ試しに育休取ってみるか」って思ったのが、全ての始まりであり、とんでもない世界の入り口でしたね(笑)
当初は、仕事につながるという興味本位の育休取得だったんですね。
はい。育休は仕事前提でとりました。
「自分の育休と県内男性の育休事情をリポートしてニュースの特集でやります!」と。
実際に、育休中は子育てのビデオや写真を撮りつつ、最後にはパパ講座にも参加しましたね。その時の講師から「県内の別の町にパパサークルがある」って聞いたんです。
取材に行ったら、お父さんとこどもだけで集まって、すごいいきいき遊んでる様子を目の当たりにして。 その時の姿が、自分でサークルを立ち上げるまでずっと胸の中にありました。あの人たちすごいいきいきしててよかったなあ、って。
父と子だけのキャンプが育んだ劇的変化
「おっきいて」にメンバーが集まって、父親目線でよかったことはありますか?
良かったことは色々あるんですけど…。
まず、パパサークルが欲しいって思ったきっかけにもなっている、「子育ての情報交換」ができてすごくよかった。
そもそも僕らの繋がりって「父親であること」だけといえば、それだけなんですよね。仕事のつながりも何もないから、しがらみがない。 家のこともなんでも相談できる。子育てでこんな工夫してるよっていうのを、うちでも真似てみようとか。
それから、イベントは基本的にお父さんとこどもだけの参加なんです。
混じって遊ぶと、 お父さんがいろんなこどもを見る。こどもも、異年齢交流ができて、別のお父さんとも関わる。今までにない交流が親にも子にも生まれます。
その空間もいい刺激になるなって思います。
それはすごくいい経験になりますね。
なにより、イベントを通じて我が子との絆も深まるんですよね。
サークルを立ち上げた翌年、「パパとこどもだけのキャンプ」というイベントを開いたんです。
僕も、当時1歳半の息子を連れて、1泊2日過ごしたんですけど、それまでの息子って、やっぱり僕に慣れなくて…。2人っきりでお風呂に入ると、この世の終わりぐらいにぎゃーぎゃー泣き叫ぶんです。一緒にお風呂に入りたいなって思っても、こっちがちょっと心配になるぐらい…。(笑)
キャンプの夜も「ママ、ママ」って最初は泣きながら寂しがってたけど、一緒に過ごしきって。
そしたら、家に帰っても2人でしっかりお風呂に入ってくれるようになったっていう!それはもう、劇的な変化を実感しましたね。
母親抜きで過ごすっていうのは、僕にとってもこどもにとってもかなりチャレンジングでした。だけど、絆が深まるんだっていうのも肌で感じましたね。
後編へ続く。
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