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仕事や子育ての狭間で、
漠然と浮かんでくる親の介護・終活への不安。
「考えたくないが、
そろそろしっかり考えておかないと」
そんなリアルな現実に直面してくるのが
TOCHANTO世代。
でも…その話、直接ちゃんと親と話せていますか。
今、どきり、としませんでした?
こんな「親子の重要な問題」に、
第三者を交え、想いを分かち合っていく。
それが、オヤシル株式会社の
「オヤシルインタビュー」です。
代表の武田さんは言います。
親から、「子」である自分へ。
そして「親」としての自分から、我が子へ。
想いを伝えあい、自分の人生を生き、
次の世代へ伝えること。
それが「後悔のない最高の親子関係」の一歩だと。
〜プロフィール〜
武田 勇
オヤシル株式会社代表取締役
https://oyashiru.com
オヤシル株式会社代表。
「後悔のない親子関係が続いていく社会」
というミッションを掲げ、事業を展開している。
大学卒業後、リクルートジョブズを経て、
2022年4月〜エール株式会社で事業計画策定、
新規事業開発など事業企画全般を担当。
2024年5月、オヤシル株式会社を設立。
経産省主催「始動next innovator 2023」
シリコンバレー派遣事業採択、
NEC社会起業塾2024採択等。
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自分に宿る「父」を知った日。
武田さんご自身、インタビューを通じて、
様々な親子に出会われてきたと思います。
中でも印象に残っている方はいらっしゃいますか?
本来、関係が良好でなかった親子(父・息子)
のことが印象に残っています。
ご依頼者である息子さんは
「親は今後のことどう考えているんだろう。
でも自分からは話しづらいし、
第三者が聞いてくれたらありがたいな」
という気持ちだったようです。
このご家庭では、過去にお父様ご自身の会社が
倒産してしまったんです。
当時、息子さんは高校受験のタイミングで、
本当は私立受験をしたかったけれど、
どうしても公立に切り替えざるをえず…。
それが原因で、親子関係が
不和な状態になってしまったそうなんです。
「過去の倒産のこともあるし、備えや借金など、
もしかしたら危ういかも。でも、親に今後のことは
しっかり考えておいてほしい」
そう思っていた時、「オヤシル」を知り、
ご利用くださいました。
インタビューでお父様に
「人生で3つの大事な出来事」を聞いたところ、
まさに倒産の話を挙げられました。
ご自身の会社の倒産という出来事は、
ご本人としてももちろんショックだったそうです。
お父様が抱えていた、
当時からの葛藤も話してくださいました。
特に、息子さんに対する気持ちを
じっくりとお聞きしていくと、
「恨まれてもしょうがないと思っている」
とおっしゃっていて。
この気持ちは、初めて言葉にされたようでした。
ご家族には直接伝えていなかったものの、
お父様は、心苦しさや申し訳なさを
ずっと抱えていたんですね…。
その想いが伝わった時に、
息子さんの気持ちに変化が生じたようです。
まず、「父は父で当時ものすごく
頑張っていたことを受け取った」
とおっしゃっていました。
息子さんもかなり仕事熱心な方なので、
実はお話を聞きながら、僕としては、
お父様と息子さんが既にすごく重なって
見えていた部分もあったんです。
すると、最後には息子さんの口から
「自分の仕事熱心さは、
実は父譲りなんだと感じた」
とか、
「なんだかんだ親子で大切にしているものが
似ている気もした」
と照れながらも言ってくださって。
ご本人としても、今まで気づかなかったけれど、
大事なことや仕事観が実はお父様と重なっていると
感じられたみたいです。
当初は、将来の備えをしておいてほしい
という気持ちでしかなかった。
それが、インタビューを通じて、
親子の中で止まっていた時や、
心のわだかまりがほだされ、
「父も本当はこういうことを考えてたんだ」
と理解することで、関係が変わっていく。
親の視点から話を聞いて、親を深く理解し、
想いを分かち合っていただくきっかけに
なったのではないかなと思っています。
当時は受け入れがたかった出来事でも、
息子さんも社会人という立場を経験された
「今」だからこそ、気持ちを知り、
当時のお父様の想いを受け入れられた。
ご自分の価値観が「父譲り」だと知れたことも、
息子さんの心が動くきっかけのひとつに
なったのかな、と感じました。
そうですね。
インタビューを終えてから親子は、
生命保険の見直しなどの今後の備えについて
会話をされたそうです。
家族がチームとして動き始めたと感じました。
「オヤシル」が提供できる価値を
しっかり届けられたのが嬉しかったです。
でも一番は、僕らに声をかけてくれた
息子さんの行動自体が、言い方が
あっているかは分からないですが、
すごく“ナイスプレー”だなと。
きっかけは「親に直接聞きづらいから第三者に
お願いする」という気持ちだったとしても、
「親のこれからの意向を知りたい」という、
それだけで尊い行為だと思います。
お父様がすごく喜んでいたのも、
僕としては印象的ですね。
「息子が私のことを知りたいと言ってくれて、
本当に嬉しい」と。
実は、このお父様へのインタビューは
あまりインタビューになってなくてですね…(笑)
というのも、こちらがあまり質問する間もなく、
お父様からずっと話してくださったんです。
こちらが用意していた質問が
あまりできなかったくらい、
話す準備万全で来てくださって。
息子さんが押したスイッチで、
お父様の想いが溢れ出している感じでしたね。
「私たちの人生」を愛し、「私の人生」を生ききる
これまで言いたくても言えなかった分、
お父様はよほど嬉しかったんですね。
「オヤシル」を親から子に向けて利用される方も
いらっしゃるんですよね。
こちらはどのようなきっかけでのご依頼ですか。
それこそ「直接言うのは気恥ずかしいが、
自分の想いや価値観を分かち合っておきたい」
という気持ちです。
「自分が亡くなった時のために家族に伝えたい」
という想いだと捉えています。
娘さんと奥さんのために
ご利用された方がいらっしゃいました。
他にも「自分自身、親の人生を言葉で
受け取っておきたかったな」という想いがあって、
子に残すために使ってくださった方もいます。
子に想いを、遺す・託すという側面なんですか?
まさにそうです。
「聞いておきたい」ではなく、「残しておきたい」
それも、今すぐというより、
「自分にもしもの時があった時に見てね」
という託し方が多いです。
少し若い、40歳ぐらいの方の中にも、
思春期の我が子に向けて利用される方もいます。
その方は「自分の想いをタイムカプセルみたいに
残しておきたい」とおっしゃっていましたね。
子どもに自我が芽生え思春期にさしかかった、
子育て中の想いを残すんです。
「今、こういう想いで過ごしてるよ」
「普段仕事でこんな想いを持って働いているよ」
「こういうことが大事だと思っているから、
君にはこう接してるよ」
と、今は直接伝えられない意図を
残すための活用です。
子どもが成人した時、「あの時こうだったんだぞ」
っていうのは、ちょっと武勇伝っぽくて、
それこそ気恥ずかしくて伝えられそうにない。
だから、今感じている素直な想いを
「冷凍保存」しておく感覚で、
利用してくださいました。
残すための活用。
“想いのタイムカプセル”という発想が素敵です。
武田さんは、この「オヤシルインタビュー」が
さらに世に広まると、
どんな世界が広がっていくと思われますか。
「オヤシル」は、
「後悔しない親子関係が続いていく社会」
をミッションにしています。
「どう生きてきたの?」
「これからの願いは?」
「もしもの時、何を大事にしたい?」
これらを、親子でしっかり伝え、
受け取っているのが
「後悔しない」状態だと考えています。
お互いに心で、「本当は知っておきたい」
と思っているなら、なおさらです。
「後悔しない親子関係」=「最高の親子関係」
のひとつだと思っているので、
それをつくっていくことが
ミッションだと思っています。
親子間で「もっと話しておけば」
「聞いておけば」がないというのは、
「愛」や「感謝」が伝わりきっている状態だとも、
僕は思うんです。
その先に、ちょっとこういう世界を見てみたい
という像もありまして。
例えば、「親の馴れ初め」を聞き、
「じいちゃんばあちゃんがいて、
父ちゃん母ちゃんがいて、
それでお前がいるんだぞ」
という話が受け継がれていく。
「人生の時間軸が長くなっていったらいいな」
と思っています。
それを僕たちは、
「私の人生」ではなく「私たちの人生」を愛そう
と表現しています。
人生は、ひとりの人間の
100年の一生で終わりではない。
過去からの色々な命の循環を受け取り、
未来には子どもも孫もいる。
祖先を愛し、未来の子孫を愛し、尊重する。
そのために「私たちの人生」を愛し、
「私の人生」を生ききる。
そんなつながりを一番身近に感じられるのが、
僕たちが今「オヤシル」でやっている
「親子のエピソードを受け取り、継いでいく」
ということではないかな、と。
壮大な話かもしれませんが、
環境問題や分断の話も、
ここに繋がるんじゃないかと感じるんです。
なんて言うんだろう…
「自分は良い過去になれるか」みたいなね。
そこにおいて、この感覚は大事かなと思ってます。
「私の人生」は、これまでつないでもらった
数々の人生・命とつながっているし、
後世の新たな人生や命にもつながっている。
最後に、親子関係で一歩踏み出せず
悩んだり、迷ったりしている方に、
伝えたいメッセージはありますか。
やはり、
「家族だけで向き合わなくていいですよ」
ということですね。
「家族だけで向き合わなければいけない」
の代替案として、「オヤシル」があります。
「愛ゆえにすれ違う」
「お互いを嫌な気持ちにさせたくないから、
ことばや想いを渡せない・受け取れない」
それを親子だけで向き合わなくてもいいんですよ
というのがひとつ。
そしてここからは、
子育てに向き合われている父ちゃんに向けてです。
子どもと向き合っていると、向き合い方が
分からなくなる瞬間ってありませんか?
その時、自分の親が自分をどう育ててきたかを
知ることが、道しるべになると思っています。
他でもない自分を育ててくれた一番身近な「親」は
何を考え、どう自分を育ててきたのか?
もしかしたら、それを知ることが、
子どもに接する親としての自分の、
ものすごく心強い“力の源”に
なるんじゃないかな、と思います。
人生のどのタイミングでも、
「オヤシル」という選択肢が、
「親子の距離を縮めたい」という気持ちの
背中を押してくれると感じました。
「親子の大切な問題に、
第三者に介入してもらってもいい」。
そんな選択肢があると知っているだけでも、
心が軽くなる気がします。
武田さん、貴重なお話をありがとうございました!

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