
▼前編はこちら
「学校に行けない」という現実に直面したとき、
親は不安と自責の念に苛まれがち。
しかし、それは決して特別なことではない。
300人以上の不登校の子どもたちと向き合ってきた
「夢中教室」「夢中カレッジ」を運営する
株式会社ワオフル代表の辻田さんは、
どの子にも必ず「好き」なことがあり、
それを見つけることが大きな一歩になると語る。
辻田さん自身が出会った3つの
貴重な経験から生まれた「伴走先生」の価値。
子どもたちが未来に希望を持てる
社会をつくるため、
新しく、温かな教育への挑戦について伺った。
〜プロフィール〜
辻田 寛明さん
ワオフル株式会社代表取締役。
オンライン家庭教師「夢中教室」(2020年11月〜)
オンラインフリースクール「夢中カレッジ」
(2024年2月〜)を運営。
大学時代からキャリア教育活動に携わり、
2019年にボーダレス・ジャパンに新卒入社。
「子どもたちの生きづらさを解決したい」
という思いから、
2020年9月に起業し、現在の事業を立ち上げる。
▼クラウドファンディングも実施中▼
現在、ワオフル株式会社様では、
クラウドファンディングも実施されております。
ぜひ、こちらもご覧ください。
二人の卒業生の大きな変化
実際に夢中教室を利用した子どもたちの様子も
教えていただけますか?
300人以上の子どもたちと関わってきましたが、
特に印象に残っている例を2つお話しさせてください。
1人目は、最初にお話しした小学3年生の女の子です。
オフィスに姿を見せなくなり1年ほど経ったころ、
実は夢中教室に来てくれたんです。
そのまま入会してくれ、私が直接担当していました。
一緒に三国志の話をしたり、
どのキャラクターがかっこいいかを語り合ったり。
ただ最初は元々知っている私でさえ、
話した後に彼女は高熱が出るほど大変でした。
でも、彼女なりのペースで頑張ってくれて。
そうして時間を重ねていくうちに、
『卒業式に行こうと思う』
と言ってくれたんです。
素晴らしい変化ですね!
その後はどうなったんでしょうか?
学校の配慮もあり、
教室で卒業証書を受け取ることができました。
しかも、実際に行ってみたら友達もできて、
それが嬉しい経験になって
徐々に人への抵抗感が減っていったんです。
その後、中学に進学して
週3回のペースで通えるようになり
『中学に集中するから、夢中教室は卒業します』
と言って巣立っていきました。
感動ですね…
本当に嬉しかったです。
もう1人は、中学1年生の男の子の例です。
その子は自閉症の特性があり、
一人でバスに乗ることもできない状態で、
小学校の高学年から不登校になっていました。
夢中教室で関わるようになり、
彼の好きなものを聞いていくと
だんだんと好きなことが見つかったんです。
彼は海外の建築に興味があることがわかったので、
一緒にGoogleアースでウィーンの大聖堂や
ケルン大聖堂を見て回りました。
「ここめっちゃこんな建物すごいね!」とか、
「前見たやつとは違うね!」みたいな話をして、
好きをどんどん深めていって。
海外の建築が好きだったんですね!
するとある日、
『いつか海外に行きたいんだけど、
何をすればいい?』と言ってくれて、
自分から英検の勉強を始めました。
夢中教室も
「最初の15分間は英会話をしてほしい。」
と言ってくれて英会話が始まり、
中学生のうちに英検準2級まで取得できました。
それが自信にもつながって、
地域の教育支援センターにも通い始め、
最終的には海外のサポートや
国際交流のある全日制高校に進学しました。
そして去年、
『2週間ロンドンのホームステイに行ってきます』
という連絡をくれたんです。
最初はバスにも乗れなかった子が、
数年後に海を渡ったんです。
何よりも頑張ったのは本人だし、
保護者さんたちのサポートがあってなんですけど、
伴走先生として、一緒に変化を感じれらることは
何よりも嬉しいことですね。
本当に子どもたちって、ちょっとしたきっかけで、
自分で進んでいく力は
どんな子でもあるなということを、
子どもたちから日々教えてもらってます。

パラレル登校という新しい選択肢
お二人のお子様の話を聞いて、涙が出てきました。
今、社会問題にもなっている不登校に対する
考え方についてもぜひ聞かせていただけますか?
はい。
まず、不登校という言葉自体が
ネガティブなニュアンスを含んでいます。
『不』が付くことで、学校に行くことが前提で、
そうでないことは否定的なものだと
内包されてしまっています。
違う形もあるんでしょうか?
例えばオランダでは誰でも学校を作れて、
何十人以上いれば学校として認められる。
子どもたちが選べる社会があるんです。
今の大人の社会を見ても、
ずっと大企業に勤め続ける人もいれば、
3年で転職する人や起業する人、
複数の仕事を掛け持ちする人もいます。
教育は社会の映し鏡です。
豊かに幸せに生きていくための力を
教育が伝えていくべきなら、
教育も今の時代に合わせてパラレルなあり方を
認めていく必要があると思っています。
確かにそうですね。
これは保護者の方にとっても、
大切な視点になりそうですね。
そうですね。
私たちが大切だと考えていることは、
『子どもたちが幸せで自立していけるか』
ということです。
ただ、それは短期的には測れないし、
とても長期的なものになると思っています。
そういう意味だと、我が子が不登校になると、
この先も真っ暗かもしれないと
感じるかもしれないけど、
この状況も全て長期的なプロセスの
1つでしかないんです。
だからこそ、
我が子にとってどういう道が合っているのか、
私たちも一緒に考えていけたらと思っています。

10万人の子どもたちに届けたい
今後の展望について教えてください。
まずビジョンとしては、
どんな子も明日がワクワクできる、
明日が楽しみになる社会を作ることです。
具体的な目標はありますか?
2030年までに最低3万人、
できれば10万人の子どもたちに私たちのサービスを
届けたいと考えています。
実際、約30万人の子どもが
30日以上の長期欠席をしていると言われ、
保健室登校なども含めると
100万人近くの子どもたちが
学校に馴染めていない現状があります。
必要としてくれる子たちに
こんな場所もあるんだってことを
届けたいと思っています。
夢中教室や、夢中カレッジはもちろん、
大学と共同研究で効果検証を行ったり、
自治体や企業と連携して届ける範囲を広げたり。
また、私たちの考え方を学校現場に伝えて
実践してもらうなど、
さまざまな形で展開していきたいと考えています。
最後に、不登校などに悩む父ちゃんたちへ
メッセージをお願いします。
子どもたちのために始めたことなのですが、
この事業をやればやるほど、
やっぱり保護者の皆様もとても苦しんでいる姿を
目の当たりにしたり、
お話を聞いてきたんですよね。
その中で、保護者の方で、
自分の子どもの幸せを願ってない人はいない!
と強く感じてます。
多くのご家族と関わってきた中で、
保護者の方もいろんな悩みがあると感じています。
不登校のことだけでなく、
勉強のこと、将来のこと。
これから人間関係は築けるのだろうか…
社会に出ていけるのだろうか…
子どもが不登校のままで
自分自身も働き続けることができるのか…
本当に辛く、不安な時期だと思うんですよね。
私たちは、子どもたちにはもちろん、
保護者の皆様にも「伴走」していきたい。
TOCHANTO(とうちゃんと)も
まさにそうだと思うのですが、
何か答えを渡せるわけではないですけど
『一緒に考える』ことはできる。
一緒に子どもの幸せを考えていきたい
と思っています。
そして、一度社会の『こうあるべき』という
価値観から離れて、
お子さんの素敵なところを
見つめ直してみてほしいです。
あとはなにより、一緒にお子さんの好きなことを
全力で楽しんでほしいと思います。
一緒に自分の好きなことを楽しんでくれる
父ちゃんの姿は、子どもにとても素敵に映ります。
難しいことじゃなくてシンプルに一緒に楽しむ。
すごく大切なことだと思います。
一緒に好きなことを全力で楽しむ、
というのは大事ですね!
そうなんです。
今は暗いトンネルの中にいるような感覚が
あるかもしれません。
でも、この経験は
必ずその子の生きる糧になります。
私の知っている不登校経験者たちは、
人の気持ちをよく理解でき、
誰かのために何かをしたい
という強い原動力を持っています。
ただ、その過程で
保護者の皆様もしんどくなった時には、
遠慮なく周りを頼ってください。
友達でも、夢中教室のような場所でも、
どこでもいい。
一人で抱え込まず、
みんなで支え合いながら、
一緒に歩んでいけたらと思います。
辻田さん、本日は素敵なお話をありがとうございました!

▼クラウドファンディングも実施中▼
現在、ワオフル株式会社様では、
クラウドファンディングも実施されております。
ぜひ、こちらもご覧ください。
この記事に関わったTOCHANSは...