【後編】地域の父ちゃんと子育てを分かち合う!仕事一筋だった父ちゃんが地域で父ちゃんの“つながり”をつくる理由

interview

となりの父ちゃんを訪ねて Vol.5

にっしー(仁科 賢人)さん

前編はこちらからご覧いただけます。

長野市のパパサークル・フリーペーパー「おっきいて」の創立者、にっしーさん。
地域で子育て中の父親向けのサークルを立ち上げイベントを開催したり、さらには季刊誌を刊行したりと、精力的に活動している。

今でこそ長野市の父ちゃんたちの中心的存在のにっしーさん。
しかし、父親ならではの子育て・家庭の悩みをひとりで抱えていた時期もあったそう。

今回はにっしーさんに、パパサークル・フリーペーパー「おっきいて」の活動やこれからのビジョン、子育てに奮闘する父ちゃんへの想いを伺った。

〜プロフィール〜

13年間勤めた地元テレビ局を2023年退職し、映像プロダクションとして独立。
趣味は息子と釣りに行くこと、鶏を飼うこと。
長野市出身で現在は市内の飯綱高原エリア在住。
今秋、自宅近くで家族連れで楽しめる宿をオープン。

どんな状況でも父ちゃんと想いをつなげたい

こどもとの絆が深まる。素敵な時間ですね!
そしてサークルの次は、フリーペーパー創刊。これまた新しいチャレンジですね。やろうと思ったきっかけを教えてもらえますか?

フリーペーパーを最初に出したのは、コロナ禍真っ只中の2022年の春。
それまでの「おっきいて」の活動が途絶え、イベントも開催しづらい状況になってしまいました。
地域のお父さんたちの存在や持っている想いは変わらないのに、それを伝える機会がないなって思っていたんです。

いつサークル活動が再開できるかはわからないけど、メッセージだけはなんとか街の人たちに伝えたいってずっと思っていて。 
そのあり方を探った時に、フリーペーパーって思ったんですよね。

僕が松本市で記者をしてた時に、すごくイケてる子育て情報満載のフリーペーパーがあったんです。取材した時とっても素敵だと思ったし、僕自身、そのフリーペーパーに救われた実体験があったので、やってみたいなっていう想いもあったんです。

コロナがきっかけだったんですね。フリーペーパーは1人で制作されたんですか?

そうですね。(笑)
完全に素人で、表紙のデザインとかも、いいなって思う雑誌をジャンル問わずに買い集めたりとか、表紙見てちょっとデザインを真似したりとか。
ほんとにそういう次元からだったからすごい時間かかって季節外れのものとかもありつつ、なんとか出すぐらいの感じで出したのが最初でした。

出来は決してよくはなかったんですけど、一回は作ったら、すごく反響があって。

でも、ちょっと1人で作るのも限界だなと思って(笑)
今はパパサークルの中にフリーペーパー部っていう有志の部活動を立ち上げて、SNSで文章のセンスがすごくいいなって思う仲間に文章書いてもらったり、公園が好きでいろんな公園で撮りためてきた写真がある仲間に、そのまま公園紹介のコーナーをお願いしたりとか、フリーペーパー部にいるみなさんのスキルをフル動員で、手作りでやってる感じですね。

「あの父ちゃん知ってる!」をもっと街に

いや〜すごいです!私もフリーペーパー拝見させてもらいましたが、すごいクオリティで長野の皆さんがうらやましいって思いました!
本当にアクティブなにっしーさんが今後目指されていることはありますか?

サークル自体は 影響力・規模・関わる人・知ってる人、そういうものを単純に広げていきたいな、と。この地域で子育てを楽しんで、ワクワクしてるお父さんをただただ増やしたいですね。
僕が持ってるイメージは、コアメンバー数人でやるより、「ゆるくてもいいから街のお父さん同士がたしかに繋がっていること」
ちょっと外出した時「あのお父さん知ってる!」って話ができるとか。「こんな時どうしてる?」「今こんなことで困ってるんだよね」が気軽に言い合えるとか。 それをフリーペーパーも使って考えていきたいなって思っています。いろいろなところにリーチして、 思いがけない出会いもあるかもっていう意味も込めてね。

フリーペーパーでも「父ちゃんたちが想いや悩みを分かち合える場をつくる」ってことですね。

これからやっていきたいのは、もっと本音のリアルなところ。
例えば夏号だったら、 あそこで昆虫が採れるよっていう情報がすごく詳しく載ってるとか。次号(2024年7月取材時点)で予定しているのは、「今後のキャリアについて語るお父さんたちの飲み会」転職・独立・それとも今の会社で行くのかっていうテーマで、本音を語ってもらおうと思ってます。 

他にも「ぶっちゃけ妻との関係どう?」みたいな話もあると面白いよねとか、自分がニュース記者をやってきたから、それくらいのクオリティにしたいなって思ってます。浅いことや綺麗事だけじゃない、深い部分をちゃんと載せたい。

読み手がどんどん読みたくなるっていう、 そんなお父さん向けのフリーペーパーにしたいなって思ってます。

“忘れられない思い出”を、次の世代へつなぐ

サークル・フリーペーパー以外でも、力を入れていきたいことはありますか?

全然違う軸で言うと、これからオープン予定(2024年7月現在時点)の民泊宿「フォレスト24/7」です。
この宿でメインで過ごしてもらいたいのは、やっぱり「家族」なんですよね。自分が子供だったの時のことを思い返して、どんな思い出が胸の中に残っているか考えていたら、気づいたことがあるんです。

「自然の中で家族と一緒に忘れられない体験をしたこと」が、ずっと胸の中で、輝く思い出として残り続けているなって。

今度は僕から、そういう時間・体験・場所を今の子供たちに与えることができればいいなと思っています。これからはそんな方面でも頑張っていきたいですね。

私も、こどもの頃に家族との遠出で経験したことや自然の中で過ごした体験は大人になっても心に残っています。それも、「いつまでもきらきらしたもの」として。

宿ではみなさんに快適に過ごしてもらいながら、いろいろな体験ができるように進めていきたくて。
実はちょうど今も、知り合いのご家族が遊びに来てくれているんですけど、ついさっきまで、庭でニワトリを散歩させてみんなでつんつん触ってたんです。巣箱から卵を取り出して「まだあったかい!」って言い合いながら、こどもたちにも握ってもらって。
そのあとは、おっきなかき氷機があるので、お父さんに手伝ってもらいながらガリガリ削ってかき氷作りをしました。

特別な体験を家族とする、お父さんとする、っていう場所を作りたいんです。 お父さんにも「こどものいきいきした表情が見られてよかったなあ」とか、「子育てって楽しいな」って思ってもらいたい。

こどもはこどもで「ずっと忘れられない思い出」っていうのを、この場所を通じて得てくれたら嬉しいな。

父ちゃんにとっても、こどもにとっても「忘れられない家族の思い出」がうまれる場所になりそうですね。

コンセプトは「暮らしを豊かにする感動を、分かち合う」です。
ただ滞在するだけの宿ではなく、自然や日本文化を感じる、日常で味わえない。プラスアルファの体験をする。そういうものをたくさん用意したいですね。

春は、庭先に山菜がぼーぼーってくらい生えているので、それを採って食べるとか。畑に行って野菜の収穫、昆虫を採る、生き物と関わるとかもね。

本来、そういうことって宿に行ってしなくてもいいことだし、森に入れば虫は捕まえられるんですけど…。
宿泊される方の住んでる場所によっては、自然が身近でなかったり、そんな環境自体がなかったりってこともあるだろうから。

自然の中での体験を知っていく入り口にしてほしいな。「自然と触れ合う入門編」みたいな体験をしてもらえたら、なお嬉しいと思っていて。
ただ、できれば中級ぐらいのところまで体験してもらえたら楽しいんじゃないかな、といろいろ準備しています。

素敵です! この宿も長野市でオープンされるんですか?

そうです。長野駅から30分ぐらいのところにある飯綱高原にオープンします。標高は960メートル。
これ、長野県民あるあるだと思うんですけど、自分が住んでいるところの標高はだいたいみんな言えるんですよね(笑)

「自分のため」が「誰かのため」にもつながっている

どれもワクワクしますね!
最後にこれだけすごく気になってしまったことがありまして、 確かに、ゆるくでもいいからもっともっと繋がりたい。でも、それでもどこか気恥ずかしくてパパサークルには行けなかったり見知らぬ父ちゃんがいても話しかけられなかったり。
それが“父ちゃん”じゃありませんか?(笑)

わかる!僕も昔は、悩んだ結果何もしてこなかったの。視覚的に「あ、お父さんいる!」ってわかる。 話しかけてみたいなって思う自分もいる。…けど、なかなか勇気が出ないですよね。

でも、今になって思うのは、みんな本当は
「繋がるってやっぱり嬉しいな」
「自分も同じこと思ってた!」
っていう人がほとんどなんだなって。実際よく言われるんですよね。

 「そっけなくされたらどうしよう」とか、「相手は嫌かな…」とかっていうのも、隣の父ちゃんも同じように思って1いるんだろうなって。
その枠を超えて一歩踏み出すと、そこからスタートするものってすごく大きい。

こどものためにもなるし、ママのためにもなるし、声をかけられたお父さんとこどものためにもなるかもしれない。
ちょっとでも話しかけてみようかな?このお父さん気になるなって思ったら、みんなのためになると信じて飛び込めるといいんじゃないかなって思います。

こどものためだけでなくママのために、一緒にいるお父さんのためになる。にっしーさんらしい視点だなって思いました!

僕はサークルも、フリーペーパーも、父親として家事育児に関わるのも、結局はパートナーのことを大事にしたいし、考えたいと思っていて。
こどものためにこどもと関わればそれでよし、ではないというか。

僕も家事育児をいいと思ってやっていたことと、妻がやってほしいって思ってたこととちょっとかけ違えてたみたいなことよくあるんですよね(笑)
自分のため、こどものためなんだけど、 妻のためでもあるっていう視点や想いも大事にしてほしいなあ、と思います!
その先に、隣の家族のためでもあるって視点が社会全体に広がるといいなと思います。

ちなみに、にっしーさんは知らない父ちゃんに普段どんな風に声をかけられてますか?

広げていきやすいのは、見えてるものから入ってくことかな。
例えば「お子さん素敵なお洋服着てますね。」「そのおもちゃ見たことないけど、なんですか!?」とかね。とっかかりさえあれば、意外と会話は広がっていくのかなって。
身に着けてるものやこどもが遊んでるものから入ってくと、あんまり警戒されなくていいんじゃないかな。

きっかけさえあればですね!この週末に、公園で面白いアイテムを持っている父ちゃんに声をかけてみようかなっていう父ちゃんが出てくるのではないかと!
本日はありがとうございました!

いやあ、出てほしいなあ~、ほんと!(笑)ありがとうございました!

この記事に関わったTOCHANSは...

仁科 賢人

3児の父ちゃん 森の中の宿オーナー

仕事人間でしたが2人目の誕生時に育休を取得して目が覚めました。長野市でパパサークルを運営しています。本業は映像ディレクターです。

may.

フリーランス/ライター/湘南暮らし/ことばと自然がすき

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