interview
となりの父ちゃんを訪ねて Vol.5
たにっち(谷 充弘) さん
週に3日だけケアマネージャーとして働き、残りの4日は家族の時間、自分の時間にしているというたにっちさん。
そんなたにっちさんも、父ちゃんになった頃は朝も夜も家族の寝顔だけをみる毎日だったそう。
体も心もを壊し、それでも「働かねば、稼がねば」という思い込みに捉われていたたにっちさんがどのようにして「時間の余白」をつくり、日々家族との「一瞬の幸せ」を味わうようになったのか。父ちゃんになってからの約10年間、ありのままの一歩一歩のご経験を伺った。
〜プロフィール〜
マネーシフト実践研究家/ライフコスト・コンサルタント
人格者であった曽祖父が、資本主義の波に呑まれ莫大な借金を背負い、お金に翻弄された家庭に育ち、お金が人に与える影響力の強さを経験する。
30歳、お金のために働く生き方に「このままでは幸せになれない」と思い、「お金とは何なのか?」という問いを立て研究を重ねる。
その後、ポスト資本主義を掲げるNZの作家、四角大輔氏と出会い、お金から自由になる唯一の方法〈ミニマム・ライフコスト〉という概念を学び、実践。
結果、週3日の持続可能なワークスタイルを実現。少ないことが豊かであるミニマル・ライフを営んでいる。
「時間と心」の余白こそが幸せの源。というコンセプトを掲げ、大切な家族との時間を最優先にした生活を送りながら、300人以上へのコンサル経験から培った、お金から自由になる技術を広げる活動を行なっている。
前編はこちらからご覧いただけます。
流産の経験とその子からのギフト
やっぱり男性育休が大きなきっかけだったんですか?
男性育休を経験して、もっと有休とか使いたいと思って少しずつ有休も使うようになっていたんですね。そんな時に3人目の子どもがお腹にできた時があって、結局、流産になったんです。
その時、なんて言うんでしょう。「命の儚さ」みたいなのをすっごい実感して、衝撃が僕の中で走ったんです。
それまでは、確かに休みは取れるようになってきてたけど、僕の頭の中ではお金を稼がなければいけないとか、なんか仕事になれへんかなってずっと考えてたんで、休んではいるけど、心ここにあらずみたいな状態だったんです。
それが子どもがいなくなった瞬間に、妻ももちろんそのことは悲しいし、上の2人の子どもたちが元気に遊んでる姿とかすごく尊く感じだし、自分って何してたんやろって思ったんですね。
強烈に考えた瞬間がそこにあって。前々から気づいてたし、子どもといる時間帯も期間限定やったのは知ってたし分かってたけど、 本当に大事なことにもう一度気づかせてくれた。
その子からのギフトをもらった感じでした。
そうだったんですね。この件をきっかけにたにっちさんの何かがカチッと変わった?
そうですね。本当に自分の人生の中で何が大事なんや、何が大事なんやって、もうひたすら考えてて。そこでやっぱり子どもと妻、家族やなって思って、そこから僕的には1歩1歩だったのが、1.5歩ぐらいにちょっと加速した。
一瞬一瞬の幸せを味わう毎日へ
具体的にどのように変わっていったんですか?
元々、育休明けから有休はほとんど使い果たしていたんですよね。
でも週休3日を安定させるために、有休が足りへんかったら欠勤までして休むようになりました。
あと、休みの日の過ごし方。
それまでは家族と過ごしてましたけどなんとか仕事にならへんかって。なんかほんと心ここにあらずで。本読んだり、スマホ見たり、副業探したりって。
それが、子どもたちと全力で遊ぶし、スマホ見ずに1日過ごすこともあるし、家族で一緒に「今この瞬間」を体験をするようになりました。
山行ったりとか、キャンプに行ったり、 海行って釣り一緒に行ったり、星見に行ったりとか、普通のことなんですけどね。子どもたちとやりたいことをやろうって。
子どもたちがやりたいこと、僕がやりたいこと、お互いに話してやりたいことをやっていくようになりました。
めちゃくちゃ素敵。それってやっぱり全然違いますか?
幸福感が全然違います。
家族がうまく回るようになった。コミュニケーションもよくとれるようになったし、 自分はこう思ってるとか、家族みんなのやりたいことも聴けるようになって、それをサポートすることもできるようになった。
もちろん、子どもたちと遊ぶ時間大事にするようになって、幸福感が今までの週休3日とか4日とか取れるようになったのがが1増えたとしたら、20、30くらい圧倒的に増えました。
なんて言うんだろう、“一瞬の幸せ”みたいなのあるじゃないですか。
子どもの笑顔とか、 ありがとうの瞬間とか、一緒に魚釣ってうぉ〜!ってなってる瞬間とか、流れ星見てる瞬間とか、なんかその瞬間瞬間にすごい幸せがある。
今までは遠いところに考えていた。それこそお金持ちとか、すごい家とか、そんなんが象徴的やなって思ってたけどそうじゃない。
もっともっと小さいこの瞬間とかに幸せがあるってことに気づけるようになった。それはめちゃめちゃ大きいです。
日々の感じ方が全然違う!このあたりからいろいろな考え方も変わってきたりしたんですか?
そうですね。
例えばお金。
まず家族4人の暮らしは最低限どれぐらいのお金が必要なんだろうって考えるようになって、家計簿をつけ始めました。そしたら意外と少ないやん!ってなったんですよ。うち農家なんで、特に食費も低いし、田舎やから家賃もそんなに高くないから、今の収入もっと削ってええやんってなって。
で、もっと欠勤するようになりましたね(笑)
社員としてどうなんって感じやけど、こんなお金いらんわと思って。多分もうそこらへんになったら周りの目とかあんま気にしなくなってました。
まさにめっちゃ気になりました。周りとの関わりってどうなんやろう?って。
当時の上司には「僕は結果は頑張って残すけども、休みます」って最初に言って、そこまですごい業績もあげないけど、ちゃんと、継続できるぐらいの業績上げたし、 最低限の仕事しながらやってましたね。逆にどんどん仕事のスキルは伸びた気がします(笑)
すごい!
ただ、このままずっと欠勤で続けるわけにはさすがにいかんなって思い始めたんで。
収入は下がってもいいけど、もっと時間を自由に使える職業とかポジションはないのかって思った時に、ケアマネならって思って今に至るって感じですね。
時間の余白が生まれて手に入れたこと
改めて、一歩ずつ積み上げられてきた中で感じていることってありますか?
「時間の余白」ってめっちゃ大事やなって。
元々の働き方はもちろん、週4勤務とか有休だけでやってたら、家族の時間も大切にしたいから、勉強する時間はおそらくなくて。多分ケアマネの資格は取れてなかったと思うんです。
自分の時間もちゃんと確保することは、次のステップに行くための大事なポイントやったなと振り返ったら思いますね。
これはもう、流産したときに子どもがくれた大きなギフトです。
「時間の余白」をつくること。時間の使い方って本当に人生において大きいですよね。
そうですね。
特に子どもたちといる時間ってほんと短いと思うんですよ。
今後一緒に過ごす時間は少なくなっていく一方やし。いつか親から離れるときが来ると思うし。
でも子どもの頃の記憶ってめっちゃ大事。そこに無償の愛っていうのがあれば、きっと人間として素敵な人になるんじゃないかなと思うし、それって自分の幸せにも繋がるやろうし。
家族との時間は「期間限定」。仕事は人生100年時代やから、 これからもなんぼでも時間はあるけど、家族の期間限定ゾーンはずらせないから、この捉え方で僕の人生は大きく変わったと思います。
確かに。たにっちさんのお子さんも上の子はもう小学5年生なんですよね。
そうなんです。
でも今めっちゃ面白いですよ。小学校になったらいろんなとこ行けるし。
時間は減るけど、できることはどんどん増えるからいろんなこと一緒にできるようになる。
今は家族で毎年、夏休みに子どもたちが行きたい場所、やりたいこと全部するっていうのがテーマなんですよ。
めっちゃいい!!
これめっちゃ本気で、正月から春休みにかけて、家族で夏休みのことを考えます。
めっちゃ面白いですよ。ワクワクするじゃないですか。ゴールデンウィークとか春休みももちろんできると思うんですけど、うちは夏休みがメインで。
「どこに行きたい?」「じゃ、こことこことここに行こうか」って。
そのために全部休むし、仕事も全部調整する生き方をここ2、3年してます。
最高の夏休みになりますね!
夏休みってなんか特別じゃないですか。小学校とかって。
中学校になると多分部活とかもあるやろうけど、今は夏休みの思い出をいっぱい作って。
お子さんも新学期の時点で夏休みが待ち遠しくなってそう(笑)
あと、全く別でこの働き方にシフトする時に1つやりたいことが1個あったんです。
それは、妻のやりたいことを全力で応援する。
今まで本当に迷惑をかけてきたっていうちょっと反省の念もあって、やっぱり自分のやりたいこともあるけど、やっぱり妻のやりたいこともあるし、それをまず 叶えてほしいなと思って。
それは自己犠牲とかではなく、僕のやりたいことの一つなんです。
だから休みのうち半分は妻のための時間を僕が家事とか全部やって、その時間でぜひ好きなことをやってっていう。やっと恩返しできるようになりましたね。
素敵すぎる。もう理想の生活が実現できているんじゃないですか?
いやいや、100%はまだ無理っすよ。
普段も月に何回かはちょっとあ〜、あと1時間ってなる時もあるんですけど、家には18時、最低でも19時までには帰るって決めてやる。目指せ16時に帰るっていうことなんで、子どもたちが帰ってくる時間帯に帰ってる。それができてるとベストかな。
これからの「時間」の使い方
これからのたにっちさんの目標をお伺いしてもいいですか?
まずは、ライフワークとして自分で少しずつ始めていることをもっと積み上げていきたいなと思ってます。
後4、5年経ったら、子どもたちも両方中学校になるんで、子どもたちの時間もあるけど、子どもたちの時間はちょっと短くなる。その時間を自分の時間と、妻と一緒の時間にしていきたい。
今は、僕1人でどこか遠くに行ったりとかすることは全くないんで、自分の時間を使って、それこそ父ちゃん仲間に会いに行ったりしたいなとか思ってます。
ぜひ僕のところにもいつでもいらしてください(笑)
最後に、昔のたにっちさんと同じように家族の時間が取れなかったり、稼がないと!と思って、悩んでいる父ちゃんが日本中にもたくさんいると思っていて、そんな父ちゃん仲間に一言メッセージをいただいても良いですか?
「時間」って何より大事やなって僕は思ってて。
もちろんお金も大事やし、お金が全くないって無理じゃないですか。
でもお金って後からでもなんとか頑張ったら稼げるかもしれないけど、時間は戻って来ない。
時間を大事にするかどうかで人生の密度が違う気がしてるんですよ。
子どもたちが成長していく時間ってめっちゃ濃くて、 子ども達が巣立っていったとき、おじいちゃんとかおばあちゃんになったとき、1分単位の濃さって全然違うと思っていて。
その時にしか体験できないことをやっとかなあかんと思うんです。
僕は介護の仕事を通じて、「死」とも向き合っているからこそすごく実感としてもあるんですよね。時間の価値っていうのは大事にしてほしいし、僕自身したいなって思います。
お金ももちろん大事なんですけど、それなりに幸せでみんなが健康でいられたらいいって思ってる人には、やっぱりお金よりも時間を大事にしてほしいなって思います。
あ〜!めっちゃもう28ぐらいの自分にも言いたいです。何してんの。って言いたい(笑)
まさに当時のたにっちさんご自身へのメッセージですね。本日はありがとうございました。