どれだけ悩んだとしても、この時間はやっぱり人生一番の幸せ。公立小学校教員の男性育休取得の決断の軌跡

interview

となりの父ちゃんを訪ねて Vol.2

しょうさん

関西の公立小学校で教員として日々子どもたちと向き合いながら、7ヶ月間・10ヶ月間と2度の長期育休を取得したしょうさん。
昨今、教育現場では「人手不足」や「長時間労働」の問題がよく話題にあがっているが、その中で「男性育休」を取ることはやはり後ろめたさもあったり、実際にはかなり難しいのでは?とたくさんの疑問が浮かんでくる。

そんな教育現場の「本音」を交えながら、しょうさんの父ちゃんとしての日々を伺った。

〜プロフィール〜

好奇心旺盛、体を動かす事が好きな30代。
趣味はフットサル、登山、キャンプ、カメラなど家族との思い出を記録、記憶に残したいと日々奮闘中。

一度男性育休を経験したからこそ、悩んだ2度目の決断。

こんにちは。本日はお忙しい中お時間を作っていただきありがとうございます!
はじめに、しょうさんの普段のお仕事について教えていただけますか?

こちらこそ宜しくお願いします!
普段は関西の公立小学校で教員として働いています。

僕のイメージですが、教員はまだまだ男性育休を取るのはすごく難しいんじゃないかなと思っているのですが、しょうさんは今回どういった形で育休を取られたんですか?

今、1歳10ヶ月と生後1ヶ月(取材時)の男の子が2人おりまして、1人目は9月から翌年3月までの7ヶ月間、2人目は6月から翌年3月までの10ヶ月間取得しました。

確かに、当時男性育休をとったことのある先生はうちの学校にはいませんでした。周りでもあまり聞かなかったかな。

でも、僕は元々ずっと子どもは欲しかったので、いざ妊娠したってなった時には、「とにかく関わりたい!」っていうのが一番でしたね。

すごい!キャリアとかへの迷いはなかったんですか?

 自分の中でやりたいこと、挑戦したいことはあります。それが、遅れるな〜って一瞬よぎりましたが、でもそのことでは迷わなかった。
その分、今しかできない経験を積んでからでいいと思っていたので、そんなにマイナスには思っていませんでした。

そうだったんですね。とはいえ、周りにとった人がいない中、長期の男性育休はなかなかハードルが高いと思ったんですが、その辺はいかがでしたか?

それはね〜、「根回し」ですよ(笑)

僕の場合、妊娠が発覚してすぐのタイミングで管理職の先生に相談しました。
その後、仲の良い先生や、迷惑をかけそうな先生に「こういう想いで取りたいです」って丁寧に伝えていって。これが「根回し」です。

後は、引き継ぎや業務整理を早め早めに行って、できる限り迷惑をかけない状態をつくるようにしました。

なるほど!根回しというより「働きかけ」って感じですね。今のお話だと、職場初の男性育休だったけど意外とスムーズに取れたんじゃないですか?

それが、そうでもなかったんです。

難しかったのは「子どもたちにどう伝えるか」
もちろんですけど、男性育休はいつから始まるか生まれるまでわからないんですよね。
いろんなことを考えて、学校内でも相談して、当時、担任を持っていたんですが、子どもたちにも保護者にも言ったのは「お別れの日」。
保護者も「え〜!」やったし、子どもたちも僕が育休をとった後もかなり動揺していたみたい…男性育休の難しいところやな〜って思いましたね。

そうでしたか。想像するだけで大変さが伝わります。。。そんな経験をすると、2回目の育休を取ることは、悩まれなかったですか?

いや〜めっちゃ迷いました(笑)

やっぱ復職すると、職場の人にすごく迷惑かかったなっていうのは感じたし、子どもたちにも申し訳ないっていうのは、学校に戻ってからすごく思いました。

そういったこともあり、2回目の育休はかなりのうしろめたさがありました…自分が休むことで周りに迷惑をかけてしまうのではないかとよく考えましたね。

1回目を経験したからこその悩みや葛藤もあるんですね。

そうですね。

あと、校長先生と話す中で「考え直してくれないか」「こういう働き方もあるよ」といった平行線な会話が続いていました。結局そうですね…4回は面談したかな(笑)
権利なので向こうは断れないですし、「考え直してくれへん?」みたいな。校長先生も前回職場が大変やったことも知ってるし…

一番の理由は、やっぱり人が来ない可能性が高いから。 教育現場って人不足なんですよ、ほんまに。
その穴埋めはやっぱりみんなに迷惑かかるから、校長先生も管理職として仕方ないと思います。
僕もすごく理解もするから、2回目はなかなかすんなりと決断できませんでしたね。

それは悩みますね〜…どうやって決断されたんですか?

迷惑をかけないために6月に生まれるけど、10ヶ月待って4月から 取ろうかなっていうのを最初は考えたり。でも、それを友人に相談したら、「でもやっぱ大変なのって産後ちゃう?」みたいな話になって、やっぱそうやんなって…
2回目は妻も里帰り出産ではなく、今住んでいるところで産むとこともあり、すごく不安もあったと思うんですよね。
やっぱり産後すぐ取らないと意味ないなってなりました。
妻も、結局僕が自分で決めるという性格を知っている(笑)「最後は自分で決めたらいいよ」と言ってもらい、最終的には自分で2回目も取るって決めました。

最終的に決められた理由はなんだったんですか?

育児の本とかも読んで考える中で、「仕事はいつでも、誰でもできるけど、生まれたての子供と関わることができるのは今しか、自分しかできない。」と強く思えたことが一番の理由ですね。

校長先生にも、その想いを伝えたら、最終的には「尊重します。応援するね。」と言っていただき、無事育休を取ることができました。

育休期間だからこそ、できたこと。考えたこと。

ここからは育休時〜育休後のことをお聞きしたいと思います。
この期間はどのようなことをされていましたか。

モットーとして「母乳以外全て」です(笑)
家事、育児、全てやりたいなって。父親も母乳以外は全部同じことできるってスタンスで。

でも子どもにとって母乳の割合ってすごく大きいから、そんなかっこいいこと言ったって結局母の方がすごいんですけどね(笑)

母乳以外全部!いやいやすごいです。家事育児以外にも、育休期間だからこそできたこととかありますか?

良い機会だなと思って、人生設計する中での「お金」を考えるようになりました。
実際に、この期間でファイナンシャルプランナーの資格を取得して実際に学んだことを活かして、家族のライフプランを考えてみたりとか。

あと、市のHPなどで見つけた、地域の幼稚園とか保育園でやってる地域の人との育児イベントに参加してみたりしました。
これは抵抗ある人もいると思うけど、僕はすごく良かった。育児の情報を集めたりするのって、奥さんに任せてしまう人が多いと思うんですよね。僕は、情報得ることから一緒にしたかったから、こうした場に足を踏み入れることによって育児が他人事ではなく、自分ごととして一緒に考えることができたことがとてもよかったです。
また、育休中って人とのコミュニケーションがどうしても少なくなりがちなので、自ら外に出ることの大切さを痛感しましたね。

確かに、お金のこと考えたり、地域の関わりを持ったりすることって、これからの家族の生活にもすごく重要ですし、育休中は考えるいい機会ですね。
生活リズムとかも子どもができて変わりましたか?

これは1人目と2人目の時でも違うのですが、今は妻と役割分担をしながら、朝は家族が起きるまで自分時間を作る工夫をしたりもしてます。長男の夜泣きもあったりして、うまくいかないこともあるんだけど、理想は5時起き!
子どもたちが起きてからは、朝は自分が全部担当して、妻にはゆっくりしてもらうっていう毎日を過ごしています。

男性育休を経験して、伝えていきたいこと。

自分の時間も大切にされて、奥様と相談しながらお互いの時間を作られているんですね。
しょうさんが2度の育休をされて、周りの影響っていかがですか?

同じ職場でも、次は取りたいです!っていう後輩はやっぱりいますね。
あとは、別の公立小学校で働いている山登り仲間が4人いるんですけど、今年みんな長期で男性育休をとってます(笑)多分みんなそれぞれの職場で初の男性育休なんじゃないかな。

すごいですね!そういった方々へはしょうさんはどういったお声がけをされていたんですか?

基本は「ぜひとった方がいいよ」っていうスタンスで話をしてます。今後も、自分は取ったからこそ 、次は伝えていく側やし、将来自分が上になって管理職になったときも、育休や働き方に対して理解できる人間になれたらいいなって思います。

しょうさんをきっかけに、教員の皆さんにも男性育休の輪が広がっていきそうですね。
最後に、日本中のこれから父ちゃんになる教員のみなさんで、きっと同じように周りの環境や、さまざまな事情で男性育休を諦めている人、悩んでいる人がいると思います。
ぜひそういった方々へ一言メッセージをお願いできますか?

後輩にも伝えたことでもあるのですが、育休の時間は
「人生で1番幸せな時間」
と伝えています。

楽しい時期は学生の頃にもたくさんあったし、刺激的なことはむしろ減るかもしれない。
でも育休の時間は圧倒的に「幸せ」を感じることができるなって思います。
僕も取るまでは悩んだし、復職してから2回目はもっと悩んだけど、育休を取ったことは一切後悔していません。取らなかったことの方がきっと後悔した。特に2回目は危なかったです(笑)
いろんな事情があると思うんですけど、今しかない、自分にしか味わえない幸せな時間を味わって欲しいなって思います。

最幸のメッセージです!しょうさん、本日はお話をいろいろ聴かせていただきありがとうございました!

この記事に関わったTOCHANSは...

上谷 朋大

料理家/愛妻家

KICHI

イラストレーター/画家

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