感謝から始まる食の話|映画【食べることは生きること〜アリス・ウォータースのおいしい革命〜】
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※この記事はネタバレを含みます。
今日食べたものが、
どこから来て、
誰の手を経て、
自分の口に入ってきたのか。
映画『食べることは生きること
〜アリス・ウォータースのおいしい革命〜』は、
そんな問いをやさしく、
けれど力強く私たちに投げかけてくる
ドキュメンタリーです。
アリス・ウォータースは、
アメリカ・カリフォルニアのレストラン
「シェ・パニーズ」の創業者。
食を通して、
教育と社会を変えようとする女性です。

学校給食とスローフード|毎日の食から価値観を育てる
アリスが注目したのは、
毎日子どもたちが食べる学校給食でした。
「ファストフードは、健康だけでなく
価値観も変えてしまった」。
そんな危機感から始まったのが、
地元で採れた旬の食材を使った
スローフード給食の導入です。
冷凍食品や加工品ではなく、
地元の農家と連携して新鮮な野菜を調達し、
調理師や先生が関わる本物の給食。
家庭では難しくても、学校という場所なら
多くの子どもたちに“本当の味”を届けられる。
それがアリスの原点でした。
映画では、子どもたちがアリスと食について学び、
給食を考えるうえで大切にすることを話しながら
ランチを楽しむ姿が映し出されます。

「ファーマーズ・ファースト」という思想|農家への敬意が、食を変える
映画の中で何度も登場する言葉に、
「ファーマーズ・ファースト(農家を第一に)」
というフレーズがあります。
安さや便利さではなく、
誰が、どこで、どんな想いで育てたのか
に注目する。
たとえば、スーパーで手に取るトマト。
その背後には、汗を流しながら畑で働く人がいて、
土のにおい、太陽の光、雨の恵みがある。
アリスは、そんな背景に目を向けることこそが
食べることの本質だと考えます。
これは、単なる食の話ではありません。
つくる人への敬意、
土地へのまなざし、
未来への責任。
それが“おいしさ”の土台にある
という価値観なのです。
何気なく食べて、残して、廃棄している食。
その入口と出口を考えなければなりません。
私たちは何もかも見えないようにし、
そして、知らなすぎるのです。
持続可能性と「感謝」|SDGsにはない視点を見つける
映画を観て、一番印象に残った言葉があります。
京都の料理店「草喰なかひがし」の店主が言った、
「SDGsには感謝が入っていない」という一言。

確かに、環境保護や循環型社会という言葉には、
心がありません。
数値や目標だけで語られるサステナビリティに、
どこか空虚さを感じたことが
ある人もいるでしょう。
それが他人ごとになっている原因なのかも…。
アリスの考え方は違います。
「感謝から始めること」。
目の前の食材、調理する人、届けてくれた人へ。
そのすべてに感謝があるとき、
食は単なる行為ではなく“つながり”に変わります。
持続可能性とは、
きっとその感謝の延長線上にあるもの。
だからこそ、
「おいしいね」と言葉にして伝えること、
そして
「いただきます」と「ごちそうさま」という言動が、
社会を変える一歩になるのかもしれません。
「日本の食はすばらしい」|わたしたちは何から始められるか
映画の最後でアリスはこう語ります。
「日本の食はすばらしい。ここから始めてほしい。
日本の食を大切にする人がいる。
文化があることが素晴らしい」
ぼくらは、
あまりにも当たり前すぎて忘れています。
季節を味わう文化、
行事ごとの食事、
地域食や郷土料理があります。
旬を大切にし、「いただきます」と口にする。
出汁の文化、発酵の知恵、箸の所作も。
すべてが“丁寧に食べる”ことに
つながっています。
それが失われつつある今だからこそ、
アリスの言葉が深く響きます。

今日の一食目から、はじめよう
この映画は、
「今日食べるものを、ひとつ丁寧に選ぶ」
ということを教えてくれます。
レストランでもいい。
高級食材でもいい。
大事なのはまず、
食事を“済ませるもの”から“いただくもの”へ
と、意識を変えること。
なにもしなければ、
きっと私たちはこのまま流されていきます。
でも、知ることで、気づくことで、
小さな行動を起こすことができます。
一日三回の食事は、
社会に対する意思表示であり、選択。
意思と選択には責任が生まれます。
今日の一食目から、
明日のためにいただきます。

徳島の県南、
人口約3,500人の町
牟岐町(むぎちょう)。
この町にもう一度、文化の灯をともしたい
そんな思いから、
私たち「シネマ牟岐」は動き出しました。
今や映画は、映画館で観るものから、
家で観るものへと変わりました。
でもそれと引き換えに、
私たちは何か大切なものを
失ってしまったのではないでしょうか。
誰かと一緒に映画を観ること。
映画を観に行くことが、
その日一日の特別な出来事だったこと。
観たい映画を心待ちにする気持ち。
家では味わえない、ほんの少しの「非日常」。
次回は7月12日(金)に上映します。
そして、次回は特別に映画「ハーブ&ドロシー」の
監督である「佐々木芽生」さんに
お越しいただくことが決定しました!
佐々木監督が来られるのは
【午前10時からの部のみ】
となっておりますので、
ご友人などお誘い合わせの上ご来場ください!
お待ちしております^^
